アルバイトでも一般就職でも、「長く勤められないやつはダメだ」と言われます。
一つのことを続けられない精神性に対する批判であり、根気強いという資質はどのような職業でもプラスに働くものであるため、一般社会では「長く勤められる人」が認められやすい傾向があるのです。
では、風俗業界はどうでしょうか。
風俗業界では長続きする資質はそれほど求められず、風俗嬢はお店を転々としてでも自分に合う仕事場を見つけることの方が大切です。
本稿では、色々なお店を転々としたのちに自分を活かせるお店を見つけた風俗嬢の話をします。
色々なソフト風俗を転々と
風俗嬢Mは元風俗嬢です。風俗で4年働き、現在は結婚を機に引退して専業主婦5年目になります。
彼女が風俗嬢になった理由は、お金が稼げる職業だったからです。
といっても、最初から風俗嬢だったわけではありません。
学生時代に仕送りで漫然と学生生活を送り、就職活動もあまりしなかった彼女は当然ながら卒業後も就職が見つからず、フリーターになりました。
しかし、フリーターだけではそれほど多くを稼げるものではありません。
生活も厳しかったため、それを補うために風俗の求人誌で見つけたテレクラのサクラを始めました。
彼女はその後も色々な仕事を転々としますが、働き先は全て風俗求人誌で見つけています。
テレクラのサクラは、確かに性的な要素があるものの、普通にやっていればお客さんと会うこともないため、風俗と言うほどのものではありません。
テレホンセックスなどを行うという意味ではヌキの要素がありますが、実際に男性に触れることはないのです。
その後、フリーターを辞めて風俗関係の仕事一本でやっていくことにした彼女は、ストリップ劇場の素人ショーの踊り子になりました。
ストリップショーではプロのストリッパーが主役となってショーを行いますが、プロの踊り子が踊り終えて休憩している間、素人の踊り子として舞台で躍るのです。
といっても、プロのストリッパーが厳しいレッスンを積んでいるのに対し、素人は簡単な踊りを踊るだけであり、どちらかというと踊りよりもお客さんへの接客を主な仕事としています。
彼女が働いていたころはそのようなお店も多かったのですが、徐々に過激になっていったため、現在ではお客さんが舞台に上がって素人ダンサーと絡めるようになったり、舞台の上でセックスをできるお店まで出て来る始末。
さて、素人ダンサーとしての彼女の仕事は、それほど難しいものではありませんでした。
ステージで脱いで踊るほか、お客さんと軽くキスをしたり、胸を触らせたりするだけだったからです。
そのため、ストリップ劇場での仕事ではあるものの、ストリッパーというよりはセクキャバに近い仕事内容であったと言えます。
給料は歩合制でした。お客さんは、例えば「素人ダンサーの胸を5分間触るチケット」を1枚1000円で買い、女の子にチケットを渡してサービスを受け、最終的に獲得したチケットと引き換えに劇場から歩合給が支払われるというものです。
稼ぎはなかなかよく、1日で35000円ほど稼いでいました。
しかし、彼女はこの給料の良いお店を1ヶ月ほどで辞めてしまいます。
プロのストリッパーが躍ることがメインなので、彼女たちには空き時間が多いのですが、その間は休憩室にいるのではなく、ロビーでお客さんと会話をしなければなりません。
人と話すことが苦手な彼女は、これを苦として辞めたのです。
その後、彼女はライブチャットから収入を得るようになりました。
ライブチャットとは、女の子がカメラの前でお客さんとパソコンのチャットで会話をするというものです。
もちろんエロ要素があり、お客さんの前で脱いだり、カメラの前でオナニーをしてお客さんのオカズになったりします。
彼女は1時間に1人くらいのペースでお客さんと話し、そのたびにオナニーをしていたため、1日で5回くらいイクまでオナニーをしていました。
そのため、体力的に限界を感じて1ヶ月くらいで辞めてしまいました。
風俗嬢デビュー!
その後、彼女は初めてヌキのあるお店に勤めることになります。
風俗嬢デビューです。初めは韓国エステのお店に勤めました。
韓国エステとは、在日韓国人が始めた風俗のジャンルです。
基本的には在日韓国人の風俗嬢が働いていることが多いのですが、彼女がそうであったように日本人の風俗嬢も一部にはいます。
基本的には手コキを中心としたサービスであり、ライト風俗のジャンルに当てはまります。
テレクラのサクラ、素人ダンサー、ライブチャットと、それまでヌキがあるかどうかを基準にして働いていた彼女にとっては、初めてヌキがある世界で働くことになります。
そのころになると感覚がマヒしており、ヌキを提供することへの抵抗よりも好奇心の方が強くなっていました。
求人誌を見て「このお店はどんなことをするのだろう?」と思い、好奇心から韓国エステに勤めたのです。
しかし、当時付き合っていた彼氏に韓国エステ勤務がバレてしまい、韓国エステは半年くらいで辞めてしまいました。
そして彼女が次に勤務したのがソープランドです。
場所は福原というソープ街であり、40~60分の短いコースが中心の大衆店での勤務でした。
高級店ならばたくさん稼げると知っていましたが、高級店では求められるサービスとルックスのレベルが高いことから、自分には無理だと思って大衆店を選びました。
高級ソープでは飛び切りの美人しか働くことができず、普通の容姿の彼女には無理があったのです。
とはいえ、彼女が働いていたのは今から約10年前のことであり、当時の風俗業界は今に比べてかなり稼ぎやすいものでした。
彼女も1日に5~6万円は稼いでいました。
ソープでのサービスは技術がいると言われますが、彼女の勤めた大衆店ではそれほど技術は必要ありません。
短いコースならばマットかベッドのどちらかだけで時間は過ぎていきます。
このソープはたくさん稼げましたが、結局ここも2ヶ月程度で辞めています。
彼女のお店では稼ぎの一部がボーイのボーナスとして徴収されるシステムであったため、それを不服として辞めたのです。
ソープランド給料システムはお店や地域によって大きく違うものであるため、全てのソープランドがそのようなシステムではありません。
しかし、ソープランドは特殊な業種であり、ソープ嬢はソープランドの従業員ではなく、ソープランドのプレイルームを借りて個人事業主を営むという建前になっています。
ソープランドが本番を提供しているのに対し、法的には本番行為が認められないため、このような特殊な業態にしてごまかしながらやっているのです。
したがって、ソープ嬢はプレイルームはもとより、コスチュームやタオルやその他の備品を全てお店から借りたり買ったりして営業しています。
例えばタオル代はいくら、ローション代はいくらという風にお店に支払うことになります。
そのため、ソープ嬢はその他の風俗嬢に比べて稼ぎは多いものの、負担も多くなっています。
福原のソープランドを辞めた彼女は滝井新地に行きました。
滝井新地も大阪の有名なソープ街であり、昔の遊郭街です。
建前としては料亭であるため風俗業の届出は出していませんが、もちろん店内では性的サービスが行われます。
滝井新地のソープランドでは、福原のソープランドよりも稼ぎが少なくなりました。
お客さんの料金は30分で15000円くらいであるものの、お客さんの指名が日によって大きく異なり、全く稼げない日もあれば1日で5万円を稼ぐ日もありました。
それでも、月に60万円くらいは稼いでいました。
このお店では、彼女は3ヶ月くらい働いていました。
これまた短い勤務になりましたが、彼女にとってはこのソープランドの「張り見世」というシステムになじめなかったのです。
旧遊郭街の滝井新地のようなソープ街では、「張り見世」というシステムのお店がたくさんあります。
「張り見世」とは、ソープ嬢が料亭の玄関に座り、お店にきた男性や通りすがりの男性が店先で女の子を見ながら指名する子を決めるというシステムです。
指名があると、女の子とお客さんはお店の二階に行き、部屋に通されてお茶とお菓子を出し、セックスに至ります。
さて、彼女は素人ダンサーとして働いていたころも、お客さんとの会話が苦手で辞めていますが、彼女は元来シャイなのです。
張り見世ではお客さんを取るために、見定めるお客さんに笑顔を向けたりしなければやっていけませんが、彼女にはそれが上手くできず、プレッシャーに感じて辞めてしまいました。
次に務めたのが本デリ(本番アリのデリヘル)です。
法律上、本番行為をするかどうかで売春かどうかが決まり、売春とされれば法律違反となって摘発を受けてしまいます。
そのため、当然ながら本番ありとして営業している本デリは、風俗業の届出を出したところで認められるはずはありません。
そのため、本デリは無許可で営業する違法店になります。
本デリは本番があるかどうかを除けば、普通のデリヘルと何ら変わりません。
お客さんが待つ自宅やホテルに派遣されてサービスを提供するという業態です。
彼女が勤めた本デリの本拠地は大阪であり、関西一円に派遣を行なっているお店でした。
タイプ合わせのお店(風俗嬢たちの写真や動画をホームページや風俗雑誌に掲載せず、お客さんに好みのタイプを聞いて派遣されるお店)であったため、写真を撮られることが苦手な彼女でも気楽に働けるお店でした。
そして、彼女は県外も含めた色々な場所に派遣されることを楽しく感じたため、このお店は長く続きました。
デリヘルでは、派遣先への移動も仕事のうちですが、移動の間は給料が発生しません。
そのため、出勤しても移動に時間が割かれるため実働時間は短くなります。
これを嫌ってデリヘルよりも店舗型風俗を好む風俗嬢は多いものです。
しかし、彼女のように移動することが気分転換になるという理由から、デリヘルを好む風俗嬢もいます。
店舗型風俗にはない特徴であり、店舗では箱の中に閉じ込められて延々と性的サービスをしなければならないように感じてしまい、精神的苦痛を感じる風俗嬢もいるのです。
彼女にはこのお店が働きやすく感じられたため3年間勤務し、毎月安定して30万円以上を稼ぐことができました。
その後、彼女は兼業で医療事務として働いていた病院の薬剤師と恋に落ち、結婚をしました。
結婚を機に風俗嬢を辞め、今は専業主婦として幸せな毎日を送っています。
まとめ:お店は吟味しよう
それまでの彼女の経歴を見れば、同じ性産業の中でも非常に多くの業種を転々としていることから、一般の社会人から見れば「根気がないやつだ」「根無し草のようなひどい生活だ」などと思うかも知れません。
しかし、風俗業界ではこのような姿勢は一面では好ましいものです。
風俗業界には色々な業種があり、業種ごとに働き方は大きく違ってきます。
また、同じ業種でも、店舗によって働き方に差があります。
例えば、同じソープランドでも、高級ソープならば一流のサービスを提供するのに対して大衆ソープならば技術が求められません。
お店のランクや所属する風俗嬢のレベル、お店の気風などによって働き方が大きく左右されるのです。
そのため、自分に合うお店を見つけるためには、色々なお店を転々とするのは必要なことです。
風俗業界も不景気ですから、自分に合わないお店(そのお店では自分の容姿レベルが低い、自分の身体的・性格的特徴を活かせない、お店のスタッフとそりが合わないなど)を選んでしまえば、稼ぐことは難しいでしょう。
しかし、自分に合うお店を正しく選ぶことができれば、指名がついて大きく稼ぐことができ、精神的にも余裕を持って働くことができるのです。
彼女のケースでも、自分に合う本デリを見つけられたことで、3年間もの間安定的に稼ぐことができたのです。