風俗嬢の多くは、稼ぐためにはお店に所属して、お店を利用するお客さんの中から固定客を見つけて稼いでいくのが普通であると考えていることでしょう。
しかし、そのようなスタンスはもはや古いものとなりつつあります。
最近では、インターネットを活用して個人的な営業を繰り広げている風俗嬢が増えており、風俗嬢が個人事業主としての色を強めているのです。
本稿では、個人事業主としての風俗嬢をテーマにして、新時代の風俗嬢のありかた解説していきます。
あらゆる手段で営業活動
今でこそ、デリヘルをはじめとした無店舗型風俗が主流となっていますが、一昔前は店舗型風俗が主流でした。
街の景観を改善すべく店舗型風俗が厳しく取り締まられ、その代わりとして無店舗型風俗が認められたことで、一気に無店舗型風俗が増加したのです。
かつての店舗型風俗ならば、有名店に入店するだけでそれなりにお客さんが付き、風俗嬢たちはそれなりに稼ぐことができていました。
それ以上に稼ぎたいならば、風俗嬢個人の努力でサービスを向上させたり、自分を磨いて容姿を向上させたりすれば、そのお店で売れっ子になることができたのです。
しかし、無店舗型風俗が主流になった今、風俗嬢はそのような甘い仕事ではなくなりました。
有名店に入店すればお客さんが付くわけではなくなったということは、風俗嬢は自分で自分を宣伝せざるを得なくなったということです。
自分で自分を宣伝するというのは、お店から強制されるのではなく、自分でホームページやブログを立ち上げて、自撮りや文章で自分をアピールしていくということです。
ブログをやっている風俗嬢は特に多くなります。
頻繁に更新をして読者を作り、お客さんからのコメントにも丁寧に対応がなされています。
そのほかにも、フェイスブックやツイッター、ラインなどのSNSを利用してお客さんを見つけている風俗嬢もいます。
そのような媒体を用いて自分の出勤情報等を公開し、潜在的な顧客を掘り起こすのです。
この流れの中で、「姫予約」というシステムも生まれました。
これは、風俗嬢個人のメールアドレスを使ったもので、お店を通さずにお客さんが直接的に風俗嬢に予約を入れるというものです。
一見個人売春にも見えますが、個人的に予約があったとしても、あくまでもお店の風俗嬢としてサービスを提供するため、売春にはなりません。
お客さんにとっても「個人で売春をしている売春婦」ではなく「お店に所属する風俗嬢」という認識がありますが、直接メールでやりとりできることから親近感が高まります。
これは、AKB商法によってアイドルが「会えるアイドル」になったのと似ています。
つまり、アイドル的ルックスを持ちファンも多い売れっ子風俗嬢は、今や「抱けるアイドル」的な立ち位置となっているのです。
実際、風俗嬢のアイドル性は留まるところを知りません。
近年、新宿のロフトプラスワンなどのイベントスペースにおいて、性風俗をテーマにしたイベントが頻繁に開催されており、そのようなイベントは音楽やお笑いなどのイベントをしのぐほどの盛り上がりを見せています。
人気風俗嬢もブースを出し、ステージでトークをし、そのようなところからも顧客の掘り起こしを行なっています。
上記を見ても分かる通り、性風俗全体の意識は大きく変革しつつあります。
今や、風俗嬢とお客さんが、今までにない信頼関係を結んでいくケースが出てきているのです。
いやむしろ、格差社会の激しい風俗業界では、あらゆる手を使って顧客の掘り起こしを行う風俗嬢であってこそ、初めてたくさん稼げるようになるのでしょう。
そう考えると、このような流れも当然のことであると言えます。
有名店に所属するだけでは稼げなくなった風俗嬢たちは、あらゆる手段によって個人的に営業を行っており、もはや個人事業主の色彩さえ強くなっているのです。
あるSM嬢の話
このような流れをよく表す例として、女王様専門の出張SMクラブで働くNさんの話を取り上げましょう。
SMクラブとは、抜くことよりもSM嗜好を満たすための風俗店です。
SM嗜好は本来恥ずかしいものと考えられ、そのような嗜好は日常生活では出せるものではありません。
しかし、SM嗜好を持つ男性はどこかで発散させたいと思うものであり、SMクラブはそのような男性にとっての精神の解放の場となっています。
SMクラブではお客さんがサディストになるSプレイと、マゾヒストになるMプレイがありますが、彼女が所属するSMクラブは女王様専門であり、Mプレイ専門です。
基本プレイとしてロウソク、アナルバイブ、鞭、緊縛、亀頭責め、ペニスバンド、エネマグラ、浣腸などのプレイがあります。
彼女は現在35歳であり、風俗嬢としては決して若いとは言えない年齢であり、さらにニッチなジャンルで働いているにもかかわらず、年収1000万円以上を稼ぎ出しています。
元々営業職のOLとして働いていたため、その時の知識を活かしながら、高性能デジタル一眼レフカメラとMacProを駆使し、インターネットを通じて自ら営業活動を行なっています。
今では海外からも顧客を募っているほどです。
風俗の仕事を始めたのは7年前のことです。
逆算すれば28歳での風俗デビューであり、遅いデビューでした。
専門学校を卒業してOLをしていたのですが、稼ぎの補填としてキャバ嬢をはじめ、クラブのホステスやバニーガールなども経験しました。
その時に現在勤めるSMクラブのオーナーと知り合い、「脱がなくてもいい風俗」であることを知り、興味を持ちました。
彼女が女王様をしている理由は、なにもサディストとしての性癖があったからではありません。
彼女は、体を売ることに抵抗があったのです。体を売ることに積極的になれず、体を売れば性病のリスクもあります。
しかし、SMであれば体を売らずとも済みますし、性病のリスクもありません。
また、SMの世界は普通の性風俗とは異なる世界であり、深く追求のしがいがある世界ということも興味を引きました。
さらに、風俗嬢ならば加齢が大きなマイナスになるのに対し、女王様は必ずしもそうではありません。
女王様専門の風俗では、ボンテージなどのコスチュームを着ることはありますが、基本的に裸を重視されません。
それよりも、美脚であることや痩せていることなどのプロポーションが重視される世界です。
もちろん、容姿が悪ければそれは問題ですが、マゾヒストのお客さんというのは女王様の容姿よりも、「何をしてくれるのだろう?」ということを重視します。
結局のところ、お客さんのM願望をいかに満たすかというアクションが最重要視されるのです。
そのため、スキルアップを図ってプレイのクオリティを上げることができれば、風俗嬢としての寿命は延び、収入も確実に増えていきます。
このような理由で、彼女は女王様になったのです。
働き方は自由出勤です。
自分の趣味を充実させたいと思えば、そちらに時間を割くこともできますが、彼女は基本的に週5日は働いています。
フレキシブルな働き方をしており、出勤日も複数のお客さんがついて自分が満足すれば切り上げるような働き方です。
彼女の場合は、100分コースを最も多く受けています。
週末ならば4~5人、平日ならば2~3人のお客さんが付きます。
インターネットに出勤予定を掲載し、昼過ぎから仕事をはじめ、13~25時の間でお客さんに選んでもらうという働き方をしています。
新時代の風俗嬢の営業術
年収1000万円を軽く稼ぐ、彼女の個人営業のありかたを見てみましょう。
色々な媒体を使う
彼女は、お客さんがつかないときもお店の待機所にいて、独自の営業活動をしています。
お客さんとのプレイ中の写真を撮ってブログに掲載したり、ツイッターに書き込んだりといった活動です。
ホテルでお客さんとのプレイが終わって待機所に戻ってくると、ブログをアップして初めて一つの仕事が終わるという感覚です。
彼女のお客さんは、ほとんど100%がブログやツイッターを見て来店するお客さんです。
そのため、彼女はプレイには必ず一眼レフカメラを持ち込み、責められているお客さんの写真を撮影しています。
女王様専門SMクラブでもそういう取り組みは行なっていますが、その場合、お店のホームページのトップ画面に掲載されます。
それでは、お客さんはお店で行われるサービスの概要は把握できても、彼女という特定個人のサービスであると把握することはできません。
そして、トップ画面に掲載される写真は少なく、文章も充実していないため、プレイのイメージも湧きません。
それでは意味がないので、彼女は個人的にブログやツイッターにアップし、彼女なりによく考えた文章も掲載することで、お客さんにプレイのイメージがダイレクトに伝わるようにしているのです。
実際、そこまでの営業をしていないSM嬢がほとんどですから、彼女のブログなどを見てはじめてSMクラブに興味を持ち、来店するお客さんも少なくないようです。
メールフォームの効果
また、ブログにはメールフォームも設けておき、お客さんがしてほしいプレイ内容を書いてもらうという方法も採っています。
メールフォームには大きな効果があります。
第一に、お客さんの生の声によってプレイの構成を練ってからサービスを提供できることです。
また、お客さんの中には社会的地位がある人も多く、そのような人が電話予約で、お店の男性スタッフに対して「鞭を打ってほしい」とか「アナルを開発してほしい」などとは言いにくいものです。
電話環境によっては、そのようなことは言えない場合もたくさんあるでしょう。
そこで、メールフォームへの書き込みが一番気楽でスムーズなのです。
独自のオプション
このほか、メールフォームでの申し込みの際に、「欲張りオプション」という独自のオプションを選択できるようにしています。
欲張りオプションとは、一通りのプレイをパッケージ化したものであり、その中で細かい内容をメールで伝えてもらうというものです。
SMの経験が浅いお客さんは、どのような流れでプレイが進むのか分かっておらず、それゆえに不満が生じることもあるものです。
しかし、一連の流れをパッケージ化して提示することで、お客さんの満足度を高めることができるのです。
彼女の取り組みを見ていると、メールなどを用いてお客さんとかなり密にやり取りをしていることが分かります。
彼女に言わせれば、いくらお客さんが希望のプレイを男性スタッフに伝えても、どうしても通じない部分が出てしまうとのことです。
女王様とお客さんでなければ分かり合えないものであるため、直接のやり取りが好ましいのです。
また、SMプレイというものは、本来は女王様とマゾヒストの信頼関係があってこそ良いプレイができるものです。
マゾヒストは、女王様に色々な責められ方をするにしても、本当に気持ちの良い責め方をしてもらえるのだという信頼がなければ、身を任せて快楽に溺れていくことができないからです。
彼女の作った営業システムは、まさにSMというプレイの深い部分まで考慮した上で作られた、非常に優れたものであると言えます。
海外からも顧客を取る
彼女の営業先は、今や海外にまで広がっています。
海外のお客さんを取り込むために利用したのはツイッターです。
ツイッターでは海外のアカウントともつながることができるため、彼女は海外のSMマニアをフォローしまくって多数のマゾヒストとつながりました。
SNSの良いところは、そのような営業活動をある程度展開すれば、彼女の存在がひとりでに広がっていくようになるところです。
例えば、彼女がプレイの写真を掲載したツイート(書き込み)をすれば、それをみた海外のマゾヒストたちがそれをリツイート(引用して拡散すること)して同好の人々に知られることとなり、海外のマゾヒストに自然と広まっていったのです。
彼女に対する外人のお客さんからのメールは、英文の場合もあれば日本語の場合もあります。
彼女の真似をすれば英語のメールに対応できないのでは?と思うかもしれませんが、最近は翻訳ソフトの性能も向上しているため、ほとんど問題はありません。
最近のSM業界では、海外の顧客を視野に入れた営業活動を行うお店が増えてきています。
海外のSM嗜好を持つお客さんは、その世界への追求が日本人の比ではないため、彼女のSM嬢としてのスキルアップにも大いに役立っています。
また、追求がすごいということは、それだけお金を惜しまないということでもあるため、太いお客さんにもなってくれます。
稼ぐ風俗嬢は努力する
上記のことからも、彼女が「稼ぐ女王様」になった理由は十分に理解できることでしょう。
しかし、彼女はSMへの追求が収入を伸ばすポイントであると考えているため、そのほかにも色々な努力を払っています。
例えば、プレイに必要な道具にもこだわり抜いています。
それらの道具はお店にお願いするのではなく、全て自分で探して自分で購入しているのです。
緊縛を学ぶにしても、縄師の先生を呼んで自ら勉強会を主催するほどです。
彼女に限らず、風俗嬢の世界というのは何も努力しない風俗嬢と、自分で考えて努力する風俗嬢の格差が非常に大きい世界です。
経営するのは大抵男性であるため、女性側の意識が低ければ、経営側から見てその風俗嬢は単なる「駒」となってしまいます。
それでは、風俗嬢が都合よく使われるだけであり、稼げない風俗嬢になってしまうのは当然のことです。
また、お客さんからも道具のように扱われ、精神的負担も大きく、長く続けることは難しいでしょう。
彼女自身がブログを始めたのも、ここにきっかけがあります。
彼女が風俗嬢を始めた7年前と言えば、お店から言われてなんとなく更新していくブログはあったものの、風俗嬢が個人的に、積極的にブログをやるなどというのは非常に珍しいことでした。
しかし彼女は「はてなブログ」を利用すればだれでも簡単にブログを開設できると知り、始めてみたところ、非常に大きな反響がありました。
その経験から、自分は単なる商品ではない、消費されているのではなく必要とされているのだと感じ、仕事に面白さを感じました。
それが営業や仕事へのこだわりといった積極性をかきたてることになりました。
だからこそ、7年間も風俗嬢として積極性を保って働き、年収1000万円以上を稼ぐことができるようになったのです。
まとめ:個人営業をする風俗嬢が勝つ
ブログやツイッター、また一眼レフカメラやパソコンを使いこなして営業活動を行う彼女も、初めからこのようなスキルを持っていたわけではありません。
むしろ、パソコンも持っていなかったほどです。
彼女が使っているカメラやパソコンは高価なものであり、風俗嬢としてある程度稼げないうちは、買うことさえできませんでした。
しかし、ひとたび稼いだならば、営業活動のために惜しまず購入しています。
お客さんの写真をアップする時には、プライバシーの問題があるため加工処理を行いますが、その際にも単にぼかしを入れるだけではなく、お客さんが喜ぶようにかっこよく仕上げるのがポイントだと言います。
そのためには画像加工ソフトのフォトショップを使うのが最も良く、これまた10万円ほどするものです。
そこまでしなくても・・・と思う風俗嬢もいることでしょう。
しかし、お客さんのことを考えればそうとも言っていられません。
SMクラブのお客さんは特にそうですが、ブログなどにアップされた自分画像を見てオナニーをする人も多いからです。
そのようなお客さんは、高確率でリピートしてくれます。
また、他のお客さんもそれを見てうらやましいと思い、来店するようになります。
すると、彼女もますますやる気になり、海外のSM情報サイトを見て勉強する気にもなります(海外のSM文化は日本よりもはるかに進んでいる)。
色々な勉強をするにしても、そこにはやはりお金が必要で、さらなる自己投資も行ないます。
プラスがプラスを生み、彼女はますます稼げる風俗嬢になっていくのです。
今後は、風俗嬢にとってインターネットが必須のツールになるかもしれません。
SMクラブにしても、以前は社会的地位のある人がこっそり訪れることが多かったのですが、最近では若い人も多くなってきています。
18歳くらいの若い男性や童貞の男性がSMクラブを利用することが増えているのです。
昔ならば、若い人にとっての風俗と言えばヘルス、ソープ、ピンサロなどでした。
しかし、インターネットが発達した時代に育った彼らは、インターネットを使って容易に特殊性癖に触れることができるため、SMに興味を持つ若い人が増えてきているのです。
このような、お客さんがインターネットで幅広く性に触れている時代の風俗嬢は、インターネットと無縁では生き抜いていけなくなることでしょう。
本稿を読んで何らかの活動をしてみたいと思った風俗嬢は、現時点では機材がないでしょうから、まずは手元のスマホを利用するのが良いでしょう。
スマホを利用すればブログもツイッターといったSNSは問題なく使うことができますし、カメラの機能も良く、写真加工のためのアプリも充実しています。
試行錯誤するうちに色々なコツも分かってくるでしょうから、必ずや本格的に取り組み始めたときのプラスになります。