ここ数年で、性風俗に対する意識は大きく変わりました。
本稿を読んでいる女性が若い女性ならば、あなたの親の世代とあなたの世代では、天と地ほどの差があることでしょう。
少し古い世代ならば風俗産業を汚らわしいと感じている人が多いのですが、現在ではそのような考え方は古いものとなっており、多くの女性が風俗嬢として前向きに働いています。
この意識の変化には、どのような影響があったのでしょうか。
そして、風俗嬢の数はどのくらい増えているのでしょうか。
性風俗に対する人々の意識の変化
その昔、性風俗に従事する女性は「淫売婦」などと呼ばれていました。
この言葉が日常的に使われていたのは戦後間もないころのことで、国全体が困窮していた時代のことです。
戦禍による貧困に見舞われた日本では、女性が働く場所が見つけることは難しく、働けても給料は少なく、男尊女卑の考え方が非常に強く残っている時代ならば尚更のことでした。
そのような時代に、女性がすぐに商品価値を認められて報酬を得るためには、最後の手段として性を売らなければならない女性が一定数おり、貧困を背景として売春が行われていました。
そのことから、体を売るということはすなわち貧困・最下層・転落の象徴としてみなされるようになり、社会からの落伍者を意味していました。
だからこそ、中流以上の女性にとっては無縁の世界でした。
しかし、最近では性に関するビジネスの環境は大きく変わっています。
ここ数十年でテレビやインターネットの登場によるメディアの発達に伴い、人々の価値観は多様化し、社会の意識も女性の意識も大きく変化しているからです。
風俗嬢だけではなく、AV女優などといった性産業に従事する女性たちは、一億総中流時代と言われた高度経済成長期にはまだまだ社会から蔑視される存在でしたが、その後社会が成熟してからというもの、人々の意識は大きく変わってきているのです。
その背景には、成熟した社会において社会システムの大きく変化していることによって、格差社会が進行したことがあるでしょう。
ニュースなどでもよく社会問題として取り上げられることですが、ブラック企業社員、非正規雇用労働者、派遣社員、ワーキングプア、介護職員、シングルマザー、精神疾患患者など、さまざまな立場の人々が社会的弱者といえる貧困状態に陥り、現在もなお格差は進行し、「淫売婦」という言葉が使われていた当時と同じような下層の人々が生まれているのです。
そして、それらの貧困はあまり深刻に捉えられておらず、御情け程度の社会保障などがあるのみで、「日本では貧困とはいっても、飢え死にするほどではないのだから、世界的に見ればまだ恵まれている」などと言われることもあります。
実際には、そのそれぞれの文化圏における貧困のありかたは異なるものですから、飢え死にしないとは言っても日本人の平均的な経済状態を大きく下回るならば間違いなく貧困なのですが・・・。
そのような中流以上の層から脱落して貧困に陥った女性を中心として、性を売る行為がお金を得る手段としてポジティブに捉えられるようになってきており、だんだんとカジュアル化するようになってきています。
15年間の変化
性を売る行為が、徐々にカジュアル化してきていることには、理由が二つあります。
一つは女性の性に対する意識の変化であり、もう一つは貧困の深刻化です。
女性が性を売る行為に抵抗がなくなってきたのは、2000年代くらいからのことです。
2000年代くらいの20歳、つまり1980年生まれの女性あたりから、性の売買に抵抗を抱かない女性が急増し、その後の数年で10~40代の女性の多くにその意識が浸透しています。
この期間に女性たちの性に対する意識は非常にポジティブなものとなり、この期間には女性優位のセックスを楽しむ「痴女」という言葉がかなり浸透しましたし、最近ではセックスにポジティブな「肉食女子」といった言葉も生まれています。
現在のように風俗産業を積極的に捉える女性は、2008年を境として急増しています。
2008年といえばリーマンショックという世界不況によって、雇用が本格的に壊れてからです。
1990年代までは、性を売る行為はまだまだ転落の象徴であり、多くの女性はそのように転落したくないと考え、社会全体でもそのような雰囲気が根強かったのですが、リーマンショックを境にそのような意識はかなり変わってきています。
「仕事はないけど、ご飯は食べていかなければならないから、カラダを売るのも仕方ない」
というような消極的な意識ではなく、
「自分のルックスやスタイル、性的なテクニックにお客さんが高いお金を払ってくれている。それによって、だれにも頼らずに生きている私は、社会や周囲の人間に頼って生きている女の子より優れている。見方によっては上層にいる」
という、積極的な意識を持つ女性もいるほどなのです。
リーマンショックとは、単に株価大きく下がったというような問題ではなく、実際に社会や人々の意識まで大きく変えてしまったのです。
この意識が古い意識に再び戻っていくことは考えにくいでしょう。
そして現在、先日行われたイギリスのEU離脱投票で離脱派が勝ち、日経平均株価は大きく落ち、2016年6月28日現在では今後の先行きはどうなるか分かりませんが、これが経済的な混乱を生むようならば、女性たちの性を売る行為への積極性が加速していくことが考えられます。
2000年代以降、繁華街でスカウトされたり、求人サイトで自ら応募したり、友人から紹介されたりすることによって、多くの女性が風俗産業の世界に入っています。
今や、志願者があまりにも多くなったことで需要と供給のバランスが崩れているほどです。
以前は風俗嬢になりたがる女性が少なかったため、お店はよほどひどくなければ多くの女性を受け入れていましたが、今ではそのように簡単に商品価値が認められないようになってきています。
女性ならばだれでもできるという時代ではなくなっているのです。
風俗嬢の数が増えている
このように、風俗嬢になる女性が急増し、また社会的な偏見の減少に伴って性風俗店の数は増えており、現在の店舗数は13,000店ほど存在すると言われています。
では、それらの風俗店で働く風俗嬢はどれくらいいるのでしょうか。
そのお店が店舗型である場合、基本的には年中無休で毎日9~0時の15時間営業となっています。
無店舗型では営業時間の規制がないため、24時間営業が多くなります。
店舗型で働く風俗嬢は、午前中から出勤する早番、昼から出勤する中番、夕方から出勤する遅番というシフトでお店を回していくことになります。
無店舗型はそれぞれの風俗嬢が希望した時間帯に出勤し、仕事が入るまでは待機をしたり、指名などがあれば電話で連絡を入れて直接現場に向かわせたりと様々です。
お店にとっては、できるだけ多くの女性が在籍するように図ります。
地方のピンサロなどの小規模なお店ならば10~15人、ファッションヘルスやデリヘルなどの一般店では15~35人、客の多い人気デリヘルや有名ソープランドならば35~60人くらいの風俗嬢が在籍していなければ、長時間の営業が不可能となります。
どれくらいの風俗嬢が必要になるかは、お店の規模・知名度・人気などによって様々であり、週1回出勤のアルバイトもいれば週6日出勤の風俗嬢もいます。
また、複数の店舗にまたがって在籍している風俗嬢もいるため、在籍数は様々でしょうが、小規模から人気店までをまとめて平均化すると、在籍人数はおよそ25~30人程度になるでしょう。
この推定をもとにすれば、13,000店のお店に25~30人ですから、日本では32万5000人~39万人が風俗嬢として働いていると考えられます。
これは、東京都の一つの区の人口に相当する人数です。
他の業界と比較するとその多さがよく分かり、暴力団の構成員が約2万5000人、弁護士の数が約3万3000人であることを考えると、その10倍以上の風俗嬢が存在することになります。
そして、これはあくまでも風俗店に勤務する風俗嬢の数であり、性風俗産業全体で見れば、AV女優は1万人弱いると言われますし、非合法の裏風俗もあれば、個人売春を行う女性もおり、これらは人数の推測は難しいもののおそらく非常に多いと考えられます。
したがって、性を売っている女性は32万5000人~39万人という数字を大きく超えることでしょう。
最近の数年では熟女ブームというものも起こっており、年齢の高い風俗嬢も存在しますが、やはり中心となる年齢層は20~34歳の女性です。
20~34歳の女性人口は約1000万人ですから、20~34歳の風俗嬢が35万人いると仮定したならば、20~34歳の女性の28人に1人は風俗嬢という計算になります。
風俗嬢への就職が難しくなっている
28人に1人という数字をおおざっぱに考えると、クラスに1人は風俗嬢がいるという計算になります。
あなたの学生時代の知人も、もしかしたら風俗嬢をやっているという可能性は大いにあるということです。
もちろん、これは1000万人という20~34歳の女性人口を20~34歳の風俗嬢人口で割った数字であり、潜在的な就業希望者を考えるならば風俗嬢の数はもっと膨れ上がります。
なにしろ、現在は求人サイトに風俗嬢募集の広告をかければ、働きたいという女性が集まってくる買い手市場なのです。
このことから、一つのことが分かります。
風俗嬢という仕事は、昔のように裸になる覚悟さえあればだれでも就ける仕事ではなくなっているということです。
今でも、お金に困った女性などが最終手段として風俗嬢になることで、風俗業界が女性のセーフティネットになるなどと考えられることがあるものですが、実際にはそのようなことはなく、男性から見て性的興味を催さない女性が風俗嬢になりたいと考えても、なることはできません。
風俗嬢になりたい女性が面接に行ったとしても、それぞれのお店が求めるレベルをクリアできない女性は断られてしまうのです。
実際に、平均的な風俗店に10人が面接に来たならば何人くらい採用されるのかといえば、せいぜい3人程度です。
外見によって売り物になりそうな女性は10人中4人くらいであり、外見は良くてもコミュニケーション能力に問題があったり、精神的に問題がありそうな女性も多いため、結果的には3人くらいしか採用されないのです。
それほど知名度も人気も高くない普通のデリヘルならば、どこでもこのくらいの採用率であるとされています。
面接に来る10人のうち、半分は使えないレベルと判断されます。
さらに、一旦は面接に受かった女性でも、外見以外の理由から即解雇されることも少なくありません。
例えば、採用されたにもかかわらず出勤してこなかったり、遅刻したりする女性も多く、そのような女性はすぐに解雇されてしまいます。
そのため、面接を希望した10人のうち、実質的に働くことを許されるのは1人くらいのものです。
もちろん、高級店になると就職するのはさらに難しくなります。
ここでいう高級店とは、総額5万円以上の高級ソープや、60分の基本料金(なにもオプションをつけない料金)が2万5000円以上のデリヘルのことです。
そのようなお店で採用されることは非常に難しくなります。
募集をかければ、収入の良さから若い女の子がたくさん応募してくるため、年齢で切られてしまう人も増えてきますし、容姿はだれがどう見ても良いというレベルでなければまず採用されません。
太っているなどスタイル的に問題がある女性も採用されることはありませんし、痩せているだけでも問題であり、胸は最低でもCカップなければ働くことはできません。
また、入店当初はルックスもスタイルも問題なかった女性でも、働くうちに太るなどして体型が崩れてしまえば、すぐに解雇されてしまいます。
風俗嬢になりたいと思う女性の数は年々増えており、美人の応募数も増えています。
それだけに、風俗嬢になりたくてもなれない女性が年々増えており、一説によれば働きたいと考えているけれども働けない女性の数は、実際に風俗嬢として働いている女性と同じくらい存在しているとも言われます。
この説が正しいならば、現役風俗嬢と風俗嬢になりたくても慣れない潜在的な風俗嬢の数を合わせると、14人に1人は風俗嬢と考えられます。
また、現在は風俗嬢をやっていない元風俗嬢を合わせればもっとこの数字は大きくなるため、計算の仕方にもよりますが、クラスに3~4人以上の現役風俗嬢・元風俗嬢・潜在的風俗嬢がいるということもできるかもしれません。
以上のように、風俗店で働いている女性、働きたい女性、働いたことがある女性の数は、現代においては昔とは比べ物にならないくらい増えています。
「私には縁のない世界」などと嘯いている女性もいるかもしれませんが、友人、知人、同僚、親戚、同級生、近所の人など、繋がっている人を探せば現役風俗嬢や元風俗嬢、風俗嬢志願者などに行きつく可能性は高いでしょう。
だれもが風俗産業と無縁ではいられない時代になっているのです。