現役風俗嬢からもあまり知られていない、風俗店経営の内側。
風俗店経営は厳しいと言われて久しいのですが、どれほど厳しいのでしょうか。
これから風俗嬢になろうと思っている女性も、現役風俗嬢も、風俗店経営の厳しさを知っておけば、今後の働き方のプラスになるはずです。
つかみにくい風俗店の内情
タイトルの通り、本稿では風俗店経営の厳しさに迫っていくわけですが、ここでは特にデリヘル経営の厳しさに迫っていきたいと思います。
なぜならば、昨今の風俗業界ではデリヘルの増加が著しく、今後もその傾向は続いていくことが考えられるからです。
デリヘルの経営というものは、誤解を含む色々なイメージも持たれがちなものです。
とても儲かっている、ヤクザと付き合わなければならない、風俗嬢とヤレるなどが代表的なものですが、これらのイメージは全て、ある意味ではイエスであり、ある意味ではノーです。
商売である以上、儲かることもあれば損をするときもあります。
ヤクザとの関係は依然ほど明確な物ではありません。
風俗嬢とヤレるかどうかは経営者次第で、面倒なことが頻発しても良いならば女の子に手を出すことも可能です。
もっとも、経営者に簡単に股を開くような女性は、トラブルメーカーになりがちであるという特徴があり、実際に本番講習(講習と称して本番行為を強要すること)を迫ったために後日その女性の旦那さんから刺殺された風俗店店長もいます。
このように色々と分からない部分の多いデリヘル経営の内情を見ていくことにしましょう。
店舗型がほとんど消えた2000年代
まず、日本の性風俗は、2000年代を境に全く異なる世界へと変貌しました。
それ以前は、都心の繁華街には店舗型風俗店がたくさんあったものです。
その時代の風俗店は景気も上々でした。
そんな好景気が怪しくなったのは、2002年あたりからです。
このころ、突然警察や地域社会による店舗型風俗への締め付けが厳しくなり、店舗型風俗店の中には廃業や転業を余儀なくされるお店が出てきました。
そして2004年、石原慎太郎都知事と竹花豊副都知事による歌舞伎町浄化作戦が始まりました。
2005年に都条例として店舗型風俗店の新規参入禁止が施行され、2006年には風適法が大幅に改善されました。
この結果、店舗型風俗店を掃討する代替案として認められていた、待合型(お店で風俗嬢を選んで一緒にホテルに行くタイプの風俗)が禁止されました。
その結果、店舗型風俗店は吉原のような旧赤線地帯の店舗を除けば、全国の歓楽街からほとんど消え去ることになったのです。
このようなことが起きたのですから、風俗業界は大混乱に陥りました。
長い期間をかけて浄化作戦が行われるならば、風俗店側にも対処のしようがあるというものですが、たった2年間の間にそれまで普通に経営していた店舗型風俗店の9割が消えることとなったのです。
それまでの風俗店の経営者には、ベンツやBMWを乗り回し、高級クラブでヘネシーを飲むというような人が多かったのですが、そのような人たちが次々に破産して夜逃げをしたのですから、まさに阿鼻叫喚の地獄絵図と言ったところです。
店舗型が激減した結果、デリヘルで一発あててやろうとする人々が風俗業界に多数参入してきました。
中には、脱サラして退職金をつぎ込んで参入した人などもいます。
しかし、そのような大ばくちに出た人も、今はどうなっていることやら。
新規参入したデリヘルの9割は、1年以内に消えていったのです。こちらは夜逃げをするどころか、首を吊るものまで出る始末でした。
店舗型風俗が儲かった理由
なぜこのような事態に陥ったのでしょうか。
それは、ほとんどの風俗店経営者たちが、急激な業界の変化に対応できなくなってしまったからです。
多くの経営者はこの大変革の渦中にあって、業界の形が変わっていくことを予見することすらできませんでした。
それまでの風俗産業というのは、まず風俗嬢ありきでした。
稼げる風俗嬢をどれだけ在籍させるかによって売上が大きく左右される業界であり、逆に言えばイイ女を雇っていればそれなりに稼げたのです。
言ってしまえば、かなり簡単な商売であったともいえます。
ここでいうイイ女というものは、言うまでもなくクオリティが高い風俗嬢のことですが、何を以てイイ女とするかという分類は、当時と今でそれほど変わっていません。
以下におおざっぱなランク分けをしてみましょう。
Sランク
フードル(風俗アイドル)、風俗嬢と掛け持ちをする人気AV女優、超売れっ子風俗嬢などであり、月に150万円以上を稼ぎ出す風俗嬢
Aランク
売れっ子ソープ嬢や大衆店のナンバーワンのように、フルタイムで勤務して月収100万円を稼ぐ風俗嬢
Bランク
OLや女子大生といったバイト感覚の女性も多いものの、本指名をしてくれるリピーターを多数抱えており、月収70~80万円を稼ぎ出す風俗嬢
10年前の風俗店は、SランクあるいはAランクの風俗嬢が一人でも在籍していれば、店舗型風俗の経営でかなり儲けることができていました。
Bランクの風俗嬢が一人在籍していただけでも経営が成り立つほどだったのです。
なぜならば、当時はまだ風俗街というものが存在し、その地域で営業すれば売上の4~5割が経営者の取り分になったからです。
より具体的に見るならば、Bランクの女性で月収70~80万円ということは、売上は単純計算で140~160万円ということになります。
お店側にも風俗嬢と同額が入るシステムであり、店舗家賃が20万円として、その他の経費を差し引いてもお店に50万円くらいは入る計算になります。
受付業務などをアルバイトなどに任せるとして、一人雇っても破産するほどではありません。
ここで重要なのは、風俗街があることが前提となっていることです。
風俗街があったころは、風俗街から近い場所でお酒を飲んで酔っ払い、「風俗でも行くか」となってふらふらとお店に来るお客さんが多かったのです。
サラリーマンが居酒屋で飲み、盛り上がった末に連れ立って来店するなどの光景はよく見られたものです。
そうなれば、CランクやDランクといった、クオリティがそれほど高くない風俗嬢にもお客さんが付くことになります。
お店はそのような場合にはどんどん接客させて売上を上げてもらい、お客さんが来なければ一文も支払わないという営業形態をとることができたのです。
これならば、とりあえずお店が回っていれば収益を上げていくことはできます。
余裕ができてスカウトマンを雇い、Bランク以上の風俗嬢をもう一人獲得できれば、お店の経営は確実に軌道に乗り、事業は拡大していきます。
店舗型風俗が儲かった裏側には、こんな事情があったのです。
しかし、今や風俗街はほとんど消えてしまいました。
それでも、イイ女さえいればお店は回っていくと考えていた風俗店経営者は多く、そのような経営者はたちまち経営破たんすることとなりました。
お客さんが風俗を求めてやってくる風俗街が消えたからには、風俗店は売れる風俗嬢を確保しておくこと以上に、お金を落としてくれるお客さんの確保しておくことが重要となったのです。
つまり、風俗店経営は風俗嬢主体から、顧客主体へと変化していったのです。
無店舗型風俗の経営は大変だ!
無店舗型風俗で顧客を獲得していくためには、宣伝が不可欠です。
風俗街があればフラリと入ってくるお客さんによって顧客獲得が可能ですが、無店舗型では「フラリと」がないため、宣伝しなければならないのです。
しかし、かつてはよく出回っていた風俗情報誌は今ではほとんど壊滅状態です。
テレビで宣伝しようにも、深夜のお色気番組はなくなりました。
以前ならばマスコミによる宣伝が可能だったのですが、それが無くなったため、風俗店が自ら広告費を支払って宣伝しなければならなくなりました。
宣伝の方法は、フリーペーパーへの出稿や風俗サイトへの広告出稿、マンションへのポイスティングなどが考えられます。
このような宣伝を行うためには、掲載費、印刷費、ポスティング人員への人件費などが掛かり、月に100万円はかかります。
軌道に乗れば宣伝の効果も出てきますが、軌道に乗っていない頃には効果がありません。
なぜならば、あらゆる宣伝において、目立つ部分(フリーペーパーならば裏表紙や巻頭、インターネットならばトップページ)の広告欄は、豊富な資金力を持っている大手デリヘルチェーンや老舗デリヘル店が握っているからです。
しかし、だからと言って広告を出さないわけにもいかず、地道に続けざるを得ません。
効果が出るのは早くて1年、遅ければ2~3年かかります。
月に100万円の宣伝費を最低1年分、つまり事業が軌道に乗らないうちに1200万円の出費を強いられてしまうということです。
また、2006年以降に脱サラなどしてデリヘルに参入して1年以内で消えていった経営者たちは、自分の生活を支えられずに消えていきました。
脱サラして失業保険や退職金をかき集め1000万円作ったとしても、それとは別に自分の生活を支える手段が必要となります。
しかし、デリヘルを軌道に乗せるだけでも大変なのに、自分の生活まで支える余裕を持つのは大変なことです。
何か副業をすればいいというような甘いものでもありません。
自分の体は全てデリヘルに従事させねばならず、電話は転送して24時間体制で対応しなければなりません。
女の子の面接もありますし、最初はスタッフを雇うお金がないため女の子をホテルに送り届けるためのドライバーも自分でこなします。
その間にも予約の電話やトラブルの電話は鳴り続け、とても自分の生活費を稼ぐ余裕などないのです。
だからこそ、デリヘルの世界で比較的成功しやすいのは、小規模なデリヘルを女性が経営した場合であると言われています。
つまり、経営者自身が風俗嬢としてサービスを提供できる風俗店ならば、自分の生活を支えながら経営することができます。
実際に、小金持ちのお客さんが昵懇の風俗嬢に出資をしてお店を出させるというケースはあります。
起業したがる女性はバイタリティや社交性もあるため、常連の獲得もうまく、風俗嬢とも同業のよしみから仲良くなりやすいというメリットがあります。
実は参入障壁が高いデリヘル
話が少しそれましたが、デリヘル経営で問題となるのは経営者の生活費だけではありません。
それは、生活に困って野垂れ死にしないための条件でしかありません。
デリヘル経営者として成功しようとするならば、宣伝費以外にも色々な出費があります。
クレームをつけてくるお客さんに対応するオペレーター、お客さんの希望を的確に把握して風俗嬢を派遣し、またホテルやお客さんの自宅にお客さんをナビゲーションする接客係、また風俗嬢を迅速にお客さんのもとへ送り届けるドライバーなど、これらをすべて経営者一人でこなすのは無理であるため、スタッフを雇う必要があります。
人件費がかかるのです。
ちなみに、高級デリヘルではオペレーターには元ホテルマンを、ドライバーには元タクシー運転手をと言ったように、プロを雇っていることもあります。
ホームページの開設も必要です。
それも、ほとんどのデリヘルが凝ったサイトを立ち上げているのですから、出来合いのテンプレートを使って何の飾り気もないホームページを作ったところでお客さんは逃げてしまいます。
SEO対策も行ない、検索されたときにできるだけ上位に表示されるための工夫もしなければなりません。
そのためには、プロに委託する必要があり、そこにもお金がかかります。
都内全域に風俗嬢を派遣するような大手デリヘルチェーンになると、地域のラブホやレンタルルームの空き状況、風俗嬢をスムーズに送り届けるために渋滞情報、待機中の風俗嬢の位置情報を把握するためのルートマップ、お客さんの好みを把握するための過去のプレイ情報のデータなど、それらを全て把握するためのシステムを構築しているほどです。
これを読めばわかる通り、デリヘル経営は一筋縄ではいかないのです。
「いっちょデリヘルでもやるか!」と意気込んだ人が安易に参入すれば、かなりの資金を貯めてからの参入であるとか、かなり大きなスポンサーがついているといった場合を除けば、十中八九失敗に終わることでしょう。
まとめ:店舗型風俗か大手か老舗で働こう
このことは、風俗嬢にも示唆を与えてくれます。
もしこれから風俗嬢になろうと思っている人が、デリヘルならばどこでもいいと考えているならば、それは間違いです。
新規参入したデリヘル店が女の子を募集しているからと言って、そこに所属してしまえば、近い将来潰れてしまう可能性が非常に高いのです。
また、短期間で潰れてしまうような資金力に乏しいお店というのは、宣伝力が低く、お店の管理もうまくいっていないようなお店がほとんどであり、十分に働いて稼ぐことが難しいでしょう。
切羽詰ったお店になれば、給料の未払いなども起こりかねません。
そうならないためには、店舗型風俗(ソープランドやその他のわずかな店舗型風俗)か大手デリヘルチェーンか老舗デリヘルで働くのがおすすめです。
ソープランドをはじめとした、今も店舗型風俗としての経営が許されているお店ならば、店舗型としての強みを持っており、お客さんも取りやすく稼ぎやすいでしょう。
大手デリヘルチェーンや老舗のデリヘルは、資金力や宣伝力があり、お店の体制も盤石であるため、お客さんもそれなりに集まりますし短期間で潰れてしまうようなことは考えにくいと言えます。
そのため、風俗嬢として長く働き、安定して稼いで行ける可能性も大きいのです。
ですから、本稿を読んでいる皆さんには、歴史の浅いデリヘル店に勤務するのではなく、店舗型風俗、大手デリヘルチェーン、老舗デリヘルのいずれかで働くことをお勧めします。