風俗嬢が売春して逮捕?捕まらないための法律知識
売春は、売春防止法によって違法行為であるとされています。
ここでいう売春とは、男性器を女性器に挿入する行為のことであり、これは「人としての尊厳を害し、性道徳に反し、社会の善良の風俗をみだすもの」として禁止されているのです。
では、売春を行う女性が逮捕されることはあるのでしょうか?
関連する報道なども交えながら、実態を把握していきましょう。
売春で風俗嬢は逮捕される?
売春は売春防止法に抵触する違法行為ですが、違法店に勤めて本番行為を行った女性や男性客が逮捕されたり、その結果罰金刑や禁固刑を受けることは基本的にはありません。
売春防止法では、個人が自由意志に基づいて行う個人売春について、明確な処罰の規定がないからです。
売春防止法で処罰の対象になるのは、売春の周旋・勧誘・場所の提供を行った場合に対象となっているのであって、勤務している性風俗店で風俗嬢が個人的に本番行為を行い、それが明るみに出て売春防止法で摘発されても、本番行為を行った風俗嬢は処罰を受けることはなく、周旋や場所の提供をしている経営者や店長だけが処罰の対象となります。
実際に本番行為をしている風俗嬢や男性客は、当事者であるだけに処罰されそうなものですが、処罰されないのには理由があります。
それは、売春防止法が成立したのは1957年と古く、当時は個人売春を行なって稼がねばならない貧困女性を追い詰めない内容にする必要があったからです。
そもそも売春防止法は、日本が国際連合に加盟するにあたって、国際社会から公娼制度を見直すことを要求されて制定した法律です。
第一条には次のように明記されています。
「売春が人としての尊厳を害し、性道徳に反し、社会の善良の風俗をみだすものであることをかんがみ、売春を助長する行為等を処罰するとともに、性行又は環境に照らして売春を行うおそれのある女子に対する補導処分および保護更生の措置を講ずることによって、売春の防止を図ることを目的とする」
ここにあるように、売春防止法は売春を行った女性を処罰することが目的ではなく、売春をする恐れのある女性を保護することを目的として法律です。
したがって、処罰の対象となるのは、売春を助長する行為を行なっている店長や経営者に限られるのです。
本番行為を提供する違法風俗店においては、売春の周旋・勧誘・場所の提供を行なっている運営側だけが問題となり、そこではたらく風俗嬢は救済対象とされています。
もっとも、問題となるのが運営側だけであって女性や客は処罰されないというのは分かりますが、風俗嬢が救済対象になるのは時代錯誤と言えるでしょう。
売春防止法が制定された1957年当時では、貧困女性の救済ということがいえましたが、今や風俗業界には一般女性が大量に流入しており、救済すべきという考え方が時代錯誤だからです。
そして、時代錯誤の法律がその時代においてどのように運用されていくかについては、その時代の警察の裁量によるところが大きくなります。
つまり、違法風俗店で働いたり、個人売春を行なっても逮捕されないから大丈夫と考えてよいというわけではなく、警察が問題と思えば警察の裁量によって検挙することは可能です。
また、警察が厳しい態度に出るならば、逮捕を行うことも不可能なことではありません。
店舗が摘発された実際のケース
実際に摘発されたケースを見てみましょう。
2013年10月22日放送のフジテレビの番組『実録!炎の警察官24時』において、茨城県警古河署が違法風俗店を摘発する様子が放送されました。
摘発の対象となった風俗店は、40分1万円の本サロ(本番行為を提供するピンクサロン)であり、このようなお店はどこにでも存在する業態です。
売春防止法違反と営業禁止区域での営業を行った容疑で、古河署が動いたのです。
指揮を執ったのは古河署の生活安全課長であり、2ヶ月の内偵によって経営者、従業員、風俗嬢の全てを特定し、営業時間での動きを調査し、容疑が固まった時点で家宅捜査の日程を決定しました。
違法風俗店の摘発は現行犯逮捕が条件となるため、確実な摘発のために地道な調査を行い、入念に準備をして摘発の当日となりました。
家宅捜査の当日、総勢12名の刑事が摘発に乗り出しました。
役割分担は周到になされており、もはや逃げることは不可能な状態で、捜査令状を携えて店に乗り込んでいきました。
刑事がプレイルームに乗り込むと、風俗嬢と男性客は性行為の真っ最中であり、証拠を押さえるために写真を撮られました。
これによって、店長は現行犯逮捕となり、本番行為をしていた風俗嬢と客はそのまま古河署に連行されて事情聴取を受けました。
事情聴取を受けた客は、名前、生年月日、職業などはもちろんのこと、なぜ違法店で遊んだのか、どのくらいの頻度で通っているのか、本番行為をしたのかどうかなど、かなり詳しく事情聴取されたことでしょう。
逮捕ではないため家族や職場に知られることはないでしょうが、二度と違法店で遊ばないように厳重注意を受けたはずです。
摘発されたお店は、番組内では「きわめて悪質」「本番行為によってぼろ儲けしている」などと非常に凶悪な組織として糾弾していましたが、実際には月間の売り上げはたったの250万円に過ぎません。
ここから様々な経費や風俗嬢の給料が差し引かれるのですから、実際の利益は雀の涙でしょう。
違法店は、警察に摘発されてしまうリスクを負っているにもかかわらず、簡単には儲からない業態でもあるのです。
風営法について
ちなみに、このお店は本番行為を行なっていたことで売春防止法での摘発を受けているほか、風営法違反でも摘発されていました。
つまり、小学校から半径200m以内という営業禁止区域で営業をしていたのです。
このように、本番行為を行う違法店はいつも摘発と隣り合わせです。
営業禁止区域で長年営業している合法店もありますが、いつでも警察の裁量次第で摘発対象となります。
つまり、店舗型の性風俗店には常にリスクがあるのです。
風営法では、店舗型性風俗特殊営業に当たる店(ファッションヘルス、ラブホテル、ソープランド、ストリップ劇場、レンタルルーム、アダルトショップ、出会い喫茶など)に対して、全国一律で営業禁止区域を定めています。
保護の対象となる施設は学校、病院、診療所、児童施設、図書館などであり、それらの施設の周囲200mの範囲での営業は禁止されているため、新規に営業届を出しても却下されます。
都道府県は条例によって営業禁止区域を拡大することも可能であるため、地域によってこの範囲は異なります。
このような規制によって、現在店舗型の性風俗を新しく開設することは事実上不可能となっています。
実際のところ、違法風俗店だからといって片っ端からいつでも摘発されているわけではありません。
例えば、上述の例でも一つの店舗を摘発して潰すために2ヶ月の期間と多数の人員を動員して現行犯逮捕しているわけですが、このような膨大な資源を費やして一つの違法店を潰したところで、そこで働く風俗嬢はまた別の風俗店で同じことをするでしょうし、誰も救われません。
また、違法風俗店は特定のエリアに集中するため、一つ摘発されると周囲の店舗も影響を受けて撤退することがありますが、それは違法風俗店の数が減るということではなく、安全な地域に散らばっていくだけのことです。
摘発されたお店にしても、運悪く摘発されてしまっただけのことで、経営者は再び同じことを繰り返すでしょう。
風俗嬢や客も逮捕されることは基本的にはありません。
しかし、たまたま本番行為をしていた時にお店が運悪く摘発され、事情聴取のために連行されることはあります。
違法店は常に摘発の可能性があるため、その可能性は低いにしても常にリスクとは隣り合わせであります。
そのため、これから風俗嬢になりたいと考えている女性に、違法店での勤務はお勧めできません。
売春婦が逮捕された実際のケース
違法風俗店で勤務する風俗嬢が逮捕されることは基本的にはないと言いましたが、個人売春を行なっていた女性が逮捕されたケースはあります。
2013年末のこと、歌舞伎町において、売春目的の女性が一斉検挙されたのです。
歌舞伎町のラブホテル街には、隣接する形で東京都健康プラザ「ハイジア」がありますが、その裏手は有名な街娼スポットとなっています。
昔は外国人の街娼が中心に立ちんぼをしていたのですが、現在では日本人の若い女子大生やOLが多くなっています。
事件の概要は次の通りです。
歌舞伎町の路上に立っている女性のもとに男性が近寄り、二人はそのまま歩いてラブホテルの前に立ち止まったところ、そこを捜査員が取り囲んで逮捕したというものです。
女性は30歳無職であり、歌舞伎町の路上で売春目的に客待ちをしていたとして現行犯逮捕されました。
同日、警視庁は売春目的で路上に立っている女性を一斉に取り締まり、18~60歳の女性24人を売春防止法違反容疑で逮捕しました。
すでに述べた通り、本番行為を個人的に売買する個人売春には罰則規定はなく、女性は違法風俗店で売春をしても基本的に逮捕されることはありません。
しかし、これはあくまで“基本的に”逮捕されることがないのであって、一つだけ例外があります。
売春防止法第6条では「売春の周旋」を処罰するとしており、これはつまり「人を売春の相手方となるように勧誘すること」とされています。
詳しくは「人を売春の相手方となるように勧誘するため、道路その他公共の場所で、人の身辺に立ちふさがり、又はつきまとうこと」を禁じており、罰則は2年以下の懲役または5万円以下の罰金となっています。
これによって、違法風俗店で本番行為をしたり、本番行為を前提として個人売春を行なっても罰則はないのですが、売春を目的として路上で男性に声をかけ、勧誘行為を行うことは逮捕される可能性があるのです。
実際、この事件のケースでは、男性と女性が路上で会話をし、二人でラブホテルの前で立ち止まっただけで逮捕となっています。
女性が男性の身辺に立ちふさがったり、付きまとったりしていませんし、本番行為を行なた証拠がないにもかかわらず、逮捕されています。
このことからも、売春防止法の適用は警察署の裁量に任されているところが大きいことがよくわかるでしょう。
本番行為を行なっているところを現行犯逮捕しなくとも、路上で話して、連れ立ってラブホテルの前に来たことで、状況証拠がそろったという判断で警察が動いたのです。
このようなことがあるのですから、街娼はかなり危険なビジネスであると考えられます。
24人一斉逮捕という大規模な摘発が行われると、このエリアからは女性が消え、ほとぼりが冷めたころにまた現れるはずです。
もしくは、このような女性がネットに流れて勧誘を行うようになり、警察の捜査が困難になる、売春の形態が複雑化するといった悪循環を生むかもしれません。
性風俗店や性風俗街は、世論、社会の状況、警察の都合、大きな事件の影響などによって、摘発と規制が繰り返されていくものです。
警察や行政の方針は常に生まれ変わりを繰り返しており、市場の原理にも影響されながら常に変化しています。
売春の歴史を見てみると、そのことがよく分かります。
したがって、性を売りたいと思っている女性は、逮捕の危険性がある個人売春や摘発の可能性がある違法風俗店で売春すべきではなく、あくまでも合法的な風俗店の風俗嬢になることがおすすめであると言えます。